FF11 REVIEWS

@ TOKYO (HOKUTOPIA)/東京(北とぴあ)

DIGEST MOVIE ▶︎

-高橋清隆の文書館-より
和楽器ソウルバンドHEAVENESE(へヴニーズ)が9月4日、東京都北区王子の「北(ほく)とぴあ」さくらホールで今年最後となるコンサート「FREEDOM FIGHT(フリーダムファイト) 11」を開き、全15曲を披露。1000人超が3時間以上にわたり、コントや語りを交えた笑いあり、涙ありのステージを満喫した。

 東京大空襲80年に当たる今回、ライブを貫いて紹介された物語は、太平洋戦争末期の「陸軍万朶(ばんだ)飛行隊」の闘い。隊長の岩本益臣(いわもと・ますみ)大尉らは、人命を軽視する軍上層部と米国の2つに相対した。5月に新たなミュージックビデオ(MV)が発表された『大切なひとよ』では、フリースクール東京y’s Be学園の生徒たちが踊った。

 新曲『Freedom Fight』が披露されたほか、重要無形文化財総合指定保持者の大倉正之助氏の大鼓(おおつづみ)が要所に登場。日本語ラップの草分け的存在、Kダブシャインのオンステージもあった。殺陣師の剣狼(KENRO)やバイオリニストの高橋宗久氏、歌踊演舞一座の響ファミリーが友情出演した。

 スクリーンに表示されるカウントダウンに合わせ、手拍子で幕は開いた。毎週の『HEAVENESE Style(へヴニーズ・スタイル)』で流れるオープニング曲「Spring」が演奏されると、歓声が湧く。いつものスタジオセットに座ったクミコ(Kumiko)とマレ(Marre)が、「クミコとマレと、みんなです」とあいさつした。

 会場となった王子の町を紹介する。1960年9月4日、旧プロイセンのオイゼンブルク使節団が東京湾に進入。上陸して王子を訪れたことや、ソメイヨシノが王子・染井が由来であること、戦闘機などに装備する照準器の生産地であることなどを説明した。

 再び明かりの落ちたステージ。箱が開き、メンバーが出て来る。時空を超えた道先案内人という設定の、HEAVENESEを象徴する演出だ。尺八の音色から、インストロメンタル曲『The Code of the Samurai(武士道)』が演奏された。刀を手にした剣狼が、はりつめた空気を切り裂いた。

 『イノセントマン』では、スクリーンにMVが上映された。小学校の体育でマスクを着けさせられた児童が持久走中に死亡した事件を主題にしたもの。マレは「マスク強制で死んじゃった子供がいることを風化させちゃならない」と注意喚起し、演奏が始まる。

 「15歳の時は 理想主義者だった 世間知らずだったけど 戸惑いもなかった 世界を変えてやると 意気込む夢心に 理想と現実の 区別なんてなかった

 ああ 相変わらず僕 世渡りさえもろくに出来ない 理想主義者のままさ 今も

 ああ 僕は信じてる 真っすぐ過ぎて 曲がりきれない 君だからこそ 同じ夢が見れると」

 東京y’s Be学園の生徒たち40人ほどが踊った。

 『Freedom Fight』が初めて披露された。ミドルテンポの明るい曲で、心が軽くなるような旋律だ。

 「君は何を見詰めているんだい? この街の中 見詰めていなければいけないのは一つ 約束の『人の子』は今どこに

 もう 過去の重い鎖は外して Freedom Fight

 さあ 全ての重荷を下ろして Freedom Fight」

 曲間にマレは「どうよ」と声を掛ける。客席から「いいよ」と返る。マレは東京大空襲80年を迎えていることに触れ、「われわれが学ぶべき教訓は、大本営発表すなわち国はうそをつくということ。それにもかかわらず、創られたパンデミック、茶番デミックに人々がだまされ、恐怖におののいた」と指摘。

 「甘い言葉にだまされて、気付いたら地獄だぜ、地獄で待っているのは閻魔(えんま)大王。舌を抜かれる」と『閻魔大王嘘(うそ)つかない』を演奏した。高橋氏のバイオリンの音色に続き、打楽器がフラメンコ調のリズムを奏で、手拍子が起こる。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長や、世界経済フォーラム(WEF)のクラウス・シュワブ会長らの顔が映し出される。

 『Rendezvous(ランデブー)』では、響ファミリーが、幕末にはかなく散った花魁(おいらん)の物語を演じた。この物語はマレの歴史小説『逢瀬』(徳間書店)にもなっている。

 「陸軍万朶飛行隊」の史実が語られる。800トンの爆弾を抱えた飛行機でアメリカ艦隊に体当たりして沈没させることを使命とし、岩本ら陸軍士官学校出身の操縦者たちが任に当たった。うち、佐々木友次(ささき・ともじ)伍長(ごちょう)は、9回の出撃から帰り、92歳まで生きた。

 1944年11月、フィリピン戦に投入された。

 キーボード、KASSA(カッサー)による『君が代』『さくらさくら』が披露される。スクリーンには、はためく大きな日の丸の映像が。

 このライブは毎週の配信番組『HEAVENESE Style』のスペシャル版という想定で上演されるものだ。そのため、オープニングに、マレとクミコの司会によるざっくばらんなトークコーナーがあり、中盤には、顔出しできないアナウンサー「ヘブニ・イズ」アナが登場する。今回も顔を隠しながらテレビのフレームを首に掛け、視聴者からの励ましのお便り「ビタミンメッセージ」を読み上げた。

 Kダブシャインのソロステージとなり、『UNSTOPPABLE(アンストッパブル)』『空からの力』が歌われた。

「自分が自分であることを誇る そんな感じ

 自分が自分であることを誇る というやつが最後に残る そのとおり」

 ここから、HEAVENESEのライブでは欠くことのできないコントが始まる。天国にいる安倍晋三元首相そっくりのアベノミズク博士(パーカッションのスー・Sue)と、番組で誕生したジョンホプキンズシマムラ博士の主導で、コントコーナーが進む。

 ソーラーパネル設置を義務付ける東京都知事をやゆする『ソーラー節』は、モトキ(Motoki)の三味線に合わせ、ヘルメットに作業着姿の「共産電気の皆さん」が踊った。

 ドラムのイッキ(Ikki)扮する「はんぱつ先生」が登場し、NHK教育テレビで放送された『LGBTQジェンダー体操』をもじった『性別体操』を再現。キリステルセイフの『大被害』へと続く。

 「あーあー 果てしなく うそをもり続け

 あーあー いつの日か 大勢死にまくる」

 コーナーの最後は『コロナラプソディ』。シマムラ博士が「あの歌で全てが始まったんじゃよ」と切り出し、クミコの「みんな一緒に」の掛け声で観客と大合唱になる。

 「ママー ウウウウー 泣かないでくれよ もし明日隔離されても 気にせずに生きて 生きて」

 ユーチューブから削除された初代版で、スクリーンにも大橋眞・徳島大学名誉教授の映像が表れ、コロナウイルスが存在した場合の本当の致死率「0.0008%」を発声した。

 最後にアベノミズク博士は「みんなが気付けば、世界は変えられる」との言葉を残し、天国へ帰り、コントコーナーは締めくくられた。

 そしてここからがメインテーマの後半に突入だ。

 南方戦線への出撃命令が下りた岩本大尉の妻、和子との別れの場面が、マレから語られる。軍人の妻として泣くまいと決めていたが、夜、台所で泣き崩れた。岩本は強く抱きしめる。明日、家の上を通ることを約束し、規則を無視して左旋回する。

 和子は日記に記した。

 「22日、御出発。今日から独りぼっちです」

 『たどり着けるまで』が歌われる。

 「汚れ果てても 決して負けない たどり着けるまで この愛を守るよ」

 ステージでは、日の丸の小旗を振るy’s Beの生徒たちが唱和する。曲が終わると、あちらこちらからすすり泣く声が聞こえた。

 航空機による体当たり爆撃は人命を無駄にするだけで、さほどの威力はない。岩本大尉は、航空の実態を知らない軍上層部の方針に背き、爆弾を落として生還する重要性を説く。爆弾を投下できるようワイヤーを取り付け、飛行機を改装する。その岩本は死亡した。

 「彼らの魂の鼓動を決して聞き逃すな!」とマレは声を発し、イッキ、ルー(Lue)、スー、天竜(Tenryu)による打楽器合戦「四人羽織」が展開される。途中から大倉氏の大鼓が加わり、「イヨーッ ポン」「オオオー イヨーッ ポン」の甲高い調べが会場中の空気を動かした。

 佐々木は特攻で敵艦を沈め、死んだと大本営で発表され、天皇にまで報告が届けられた。軍部は虚偽の報告をした手前、「本当に戦艦を沈めてもらいたい」と1人での特攻を強要された。しかし、部下の命を何よりも重んじた岩本中尉の言葉を回想し、「絶対に死なない」と決意する。

 琴の音色が響き、『生まれる前にいた場所へ』が奏でられる。スクリーンには、美しい日本の風景や伊勢神宮、敵艦へ向かう零戦、昭和天皇の御姿、出陣式の光景などが映し出される。

 語りの最後にマレは、「万朶隊が米国と軍上層部の2つと戦ったように、われわれもグローバリズムと国民軽視の無能な政府上層部という2つの敵に対し、勇敢に戦おうじゃないか」と呼び掛けた。

 続けて、「独りじゃない。周りには仲間がたくさんいる。そして誇りがある。あなたこそが日本」と鼓舞し、『Together(トゥゲザー)』を演奏した。

 「その時が来たら 僕は旅立つよ
  君も来て欲しい おいてはいけない

  僕は離さない 握り締めた手を
  力ある限り 僕らは歩こう」

 グラミー賞9回受賞のゴスペル界のキング、アンドレ・クラウチがプロデュースした『Lift(リフト)』が津軽三味線のかき打たれる音で始まると、盛り上がりは最高潮に達する。2階席の客も立ち上がり、ステージと一体になって体を揺らした。

 アンコールの手拍子にメンバーは戻る。マレは「今日、1人で来た人は拍手して」と問い掛ける。かなりの人数がいた。「周りに今、話し掛けて」と促す。「友達になろうよ。独りで誰にも話し掛けられず、帰っちゃいけません。ファミリーじゃん」。

 『大切なひとよ』が披露された。80年前、帝都防衛最後の砦(とりで)となった飛行第244戦隊を主題にした曲だ。率いたのは、24歳の小林照彦少佐。毎朝、調布飛行場から出撃し、「撃墜王」と呼ばれた。社会のひずみに翻弄される現代の若者たちの応援歌になっている。

 「手を取り合って上を見上げ この道を歩き続けよう

信じる心ある限り 同じ明日を見続けよう」

 後半、東京y’s BE学園の生徒たちが夏の制服姿で登場し、ステージ上を所狭しと踊った。

 最後は番組同様、『令和の唄(うた)』が流れる中、出演者とメンバーが紹介される。マレとクミコを最後尾に、メンバーは箱の中へ帰って行った。そして箱は再び時空を超えた旅へと向かうために上昇していき暗闇に消えた。

 神奈川県大和市に住む女性(52)は10歳の娘と、川崎在住の女性の友人(55)とその娘(9)の4人で来た。2020年暮れからファンだという。「コロナのおかしさに気付いて真実を求め、探る中でユーチューブのお薦めに『コロナラプソディ』が出て来て、HEAVENESEを知った。『HEAVENESE Style』にたどり着いたら、本当に素晴らしい」と経緯を明かした。

 娘は「もうガンガンに泣きました。死んだはずが生きてたって、すごい泣いた。喜ぼうじゃないかって」。HEAVENESEについては「大好き。パロディソングは面白い」と言い、『大被害』や『性別体操』などを挙げる。「はんぱつ先生はイッキさんだとすぐに分かった」と、友達と共にはしゃいでいた。